宇 髄 天元 夢 小説。 宇髄天元が嫁を抱く本 壱・肥後随喜編 [@No_464(みよしの)]

宇髄天元が嫁を抱く本 壱・肥後随喜編 [@No_464(みよしの)]

宇 髄 天元 夢 小説

不死川実弥の夢小説です。 ネームレスオリ主が出てまいります。 なんでも許せる方のみ、どうぞお楽しみください。 実弥と宇髄さんの関係って尊いですよね。 ちょっと年上の宇髄さんが実弥のこと可愛がってほしいなぁって。 鬼滅は実弥推しですが、実弥の次に宇髄さんも大好きなんです!!!!!はっきり嫁の命が一番大事って言える宇髄さん超いい男じゃないですか???宇髄さんの夢も書いてみたいけど、やっぱり私の中で宇髄さんはお嫁さんらぶな感じなので、書くならキメ学軸かな〜。 そして今回の話も実弥ちゃんに幸せになってほしいがために書きました!!!!だったら始めから三角関係にするなよと思いますよね? 笑 すみません、どうしてもこのお話書きたかったんです。 このお話の後、かわいい継子ちゃんが最後まで実弥ちゃんに寄り添ってほしい、、、。 注意 ・不死川実弥の夢小説です。 ・相変わらず口調とキャラが迷子 ・宇髄さんがチャラい ・ご都合血鬼術です ・なんでも許せる方のみお読みください [newpage] 私は実らない初恋をいつまでも引きずっている。 あれはまだ私が十二の頃だった。 いつものように兄弟と日が暮れるまで山で遊んだ帰りのことだった。 日暮れと共に現れた不気味な鬼が現れ、弟の手を引いて必死で逃げた。 しかし子供が鬼に敵うはずもなく、ああもう喰われると思ったその時、激しい爆風とともに現れ、瞬く間に鬼を倒してしまった美丈夫に、年端もいかぬ娘が惚れてしまうのも無理はなかった。 大丈夫かと差し出された手を握ると生まれて初めて胸が高鳴った。 そのお方は腰をかがめ、真っ白な歯を見せて笑った。 「派手に可愛い顔が台無しじゃねぇか」 そう言って私の顔についた泥を指で落としてくれた時には、それはもう心臓が痛いくらいぎゅうっと締め付けられるようだった。 恋する気持ちというのは凄まじいもので、私はそのまま隠の方に鬼殺隊のことを教えてもらい、彼がその鬼殺隊の中でも最高位の柱という階級だということを知った。 それからというもの何とか反対する親を説得し、隠の方に教えてもらった育手の元で二年ほど鍛錬に励み、藤襲山での最終選別を突破し、鬼殺隊の一員となった。 もう一度あの方に会いたいという邪な気持ちが入隊への入り口ではあったが、鬼に親や兄弟を殺された仲間たちの恨みを晴らしてやりたいという気持ちもむくむくと膨れ上がっていた。 そして私は幸運なことに剣士としての素質もあった。 山暮らしをしていたおかげか足腰も丈夫で体力もあった。 入隊後、メキメキと実力をつけていった私は、ようやく柱の方との共同任務にあたることとなる。 そしてそこで今の師範である風柱不死川実弥と出会い、同じ呼吸の使い手でもあったので継子にしてもらえるように必死に頼み込んだ。 もちろん継子にして欲しいという私の頼みは一刀両断されたのだが、それでも私は諦めなかった。 柱の継子となればあの方にもう一度会う可能性だって高くなるし、何より師範のように強くなりたいと純粋に思ったからだ。 それから毎日風柱邸を訪れては継子にしてくれと頼み込んでは、断られる日々が続き、何を言われようとも諦めない私に師範が折れたのはそれから約一ヶ月後のこと。 怒鳴られても毎日毎日おはぎを持って通った甲斐があった。 ちなみにまだあの頃は師範が大のおはぎ好きだということはつゆ知らず、ただ単に私の大好物で、風柱邸への行き道に売っていたからなのだが、毎回おはぎだけは律儀に受け取ってもらっていたので疑問だったが、師範もおはぎが大好物だと知りやっもその訳が判明した際には、おはぎを手土産にしていた過去の自分を存分に褒めてやった。 それはさておき、ようやく師範の継子となれたことが嬉しくって嬉しくって、師範の血反吐を吐くような稽古も全然苦ではなかった。 師範は女だからといって手加減はしない。 実際に何度もボコボコにされたが、それでも尚、継子になれた嬉しさが勝ったのだ。 それはもちろんあの方に会える日も近いと確信していたからだ。 ドキドキする恋心は激しい稽古にも負けず燃え上がる一方だった。 だか燃え上がったのもつかの間、やっとの思いで師範の柱合会議についていき、あのお方こと音柱の宇髄天元様に再び会うことができたというのに、私の淡い初恋は無残にも散ることとなる。 約三年間も恋い焦がれた宇髄さんの後ろにそれはそれは綺麗な、それはそれはおっぱいの大きな女性が3人も並んでいて、目が点になるとはまさにこのこと。 なんとか師範に連れられ挨拶することが出来たが、正直ここがお館様の屋敷でなかったらショックでぶっ倒れるところだった。 あの綺麗な巨乳なお姉様方は宇髄さんの奥様方だと紹介された時にはもう叫び出したい気持ちと涙をこらえるので必死だった。 放心状態のまま師範と共に屋敷に帰ってきた頃にはもう堪えきれず、師範の前だと言うのにわんわんと子供のように泣き出してしまった。 あまりにも大声で泣き出したものだから、師範はギョッとしたに違いない。 それなのに師範は私をそうっと優しく抱きしめ、赤子をあやすように背中をさすり、私が落ち着くまでしばらくそのままでいてくれた。 師範は稽古は厳しいし、怒った時は鬼より怖いし、女の私もボコボコにするけれど、それ以上に優しくってあたたかくって、私にとって師範はまるで兄のようで、師範だというのにこういう時はついつい甘えてしまう。 びーびーうるさい私の話も、師範はなんだかんだ最後まで聞いてくれた。 「初恋だったんですーー宇髄さんのことーー!!!!鬼殺隊に入ったのも、宇髄さんに会えると思ったからで!!!まさか、あんな綺麗な奥様がいるなんて、聞いてません゛!!!!」 「おーおー、そりゃ災難だったなァ」 「宇髄さんの奥様方、三人ともものすごく綺麗でしたねえ!!!おっぱいもおっきいし!!!私なんて綺麗でもなけりゃ、巨乳でもないじゃないですか?!!!わーーーん!!勝てるところが一つもない!!!!」 「あァ、お前は確かに乳はねぇが・・・」 「やっぱり男の人はああいうおっぱいが好きなんですねぇぇぇぇぇ!!!!」 「落ち着けェ!!乳はねぇが、そのお前も・・・か、か、かわいらしい、と思うぜェ」 その時の師範の真っ赤な顔は今でも忘れることができないくらいにかわいかった。 きっと泣いてる私を慰めようとして、かわいいだなんて照れながらもお世辞を言ってくれて、それだけで初恋の終わりに傷ついていた私随分と救われた。 いつまでも真っ赤なままの師範の顔を見ていると、どんよりと曇っていた私の心も晴れやかだった。 さようなら、私の初恋。 そうして私の宇髄さんへの恋心は切ない終わりを迎えたかのように思われた。 が、これは一体どういう状況だろうか。 どうしてこんなことになったのか。 久しぶりの師匠以外との合同任務の相手がまさか宇髄さんだとは知らされず、鴉に急がされるまま行った待ち合わせ場所で宇髄さんの姿を見つけ、鴉を睨みつけたのが数時間前。 しかし宇髄さんとの任務は拍子抜けするほど楽だった。 今まで何人もの一般隊士が頸を切れなかった鬼だが、柱の宇髄さんとの甲の私と二人でかかればなんてことはなかった。 あまりにもあっさりと終えてしまったなと思ったのも束の間、気づけばこの部屋に閉じ込められていた。 「こりゃ派手に厄介な血鬼術だな。 元凶の鬼は確実にやったし、待っていてもそのうち出られると思うが、接吻するだけなら、ちゃっちゃと済ませようぜ」 「は?何馬鹿なこと言ってるんですか?」 ちゃっちゃと済ますって何を?え、まさか接吻?接吻ってあの唇と唇をくっつけるやつですよね?え?私と宇髄さんが唇と唇、くっつけるの?無理無理無理!!!!心の奥底に蓋をしていたはずの恋心がふつふつと湧き上がってくる。 心臓の音が嫌にうるさくて、隣の宇髄さんにまで聞こえてしまうんじゃないかと気が気でない。 そんな私の気を知ってか知らずか宇髄さんはなんだか楽しそうで、余裕に溢れた態度がまた私の心を搔き回す。 「どうした?俺様が派手にいい男だから緊張してんのか?」 「緊張するに決まってるじゃないですか!!!本当にするんですか?接吻!!!」 「早くここ出てぇからな」 「お、お嫁さんに悪いです」 「あいつらは、そんな細かいこと気にしねーよ」 「気にするに決まってるじゃないですか!!!」 ああ、この人ほんとにする気だよ。 どうしよう、どうしよう。 確かにここを早く出るためには接吻するしかなさそうだ。 扉を押しても引いても殴っても切りかかってもびくともしない。 何度も私と宇髄さんで試してみたが、やっぱり開かない。 いや待てよ!接吻しなければ出られない部屋と書いているが、どこに接吻しろとは書いていない。 つまり頬とか手とかに適当に口づけしたらいいんじゃない!!それなら私の傷も少なくて済む!!よし、名案だと宇髄さんの名前を呼んだ時、ぐっと後頭部を押され、ふにっと柔らかい何かが唇に触れた。 視界いっぱいに広がる宇髄さんの整った顔に、口づけされたのだと気づき、ドクンドクンとより一層心臓の音がうるさくなる。 「お!開いたぞ!!おーおー、赤くなっちゃって。 そんな初めてでもあるまいし・・・って、マジ?」 「こんの、初恋泥棒!!!!!」 宇髄さんに恋をしてから五年、この苦い初恋にしっかりと蓋を閉めていたはずなのに、一向に次の恋には進めないでいる私にとっては、初めての口付けだ。 大袈裟だが大事に大事にとっておいた初めてを、いとも簡単に奪われたショックと、恋い焦がれた初恋の人と接吻してしまった事実に、きっと今私はとんでもなく間抜けな顔をしていると思う。 赤い顔をこれ以上宇髄さんに見せたくなくて、私は逃げるように部屋を後にした。 風柱邸へと向かいながらも、ボロボロと涙が溢れて止まらない。 唇に残る柔らかい感触が忘れられなくってどくどくと心臓の高鳴りはいつまでたっても治ってくれない。 実らないとわかっている苦しい恋だから、早く忘れてしまいたかった。 それなのに、どうしようもなく溢れてくる好きだという気持ちは、もう止められそうにない。 私は一生実ることのない切ない恋心を抱いて、これからも過ごしていくのだろうか。 自分自身の気持ちの整理がつかないまま、見慣れた風柱邸まで戻ってきた。 まだ日が昇って間もないが、昨夜から別の任務に出かけていた師範が帰ってきているようで、屋敷には明かりがついている。 どうしよう、師範の顔を見たら、また余計に泣いてしまいそうだ。 屋敷の入り口の前で何とか涙を引っ込めようと頑張ってみたが、一向に止まらない。 そうこうしている間にもなかなか入ってこない私を見かねた師範が扉をあけて、私の情けない泣き顔を見てギョッとしたかと思えば、すぐに心配そうにおろおろとかけてきた。 師範は怪我がないか一通り見終えると、何にも言わないでメソメソ泣く私の背中を優しくさすってくれる。 そんな師範の優しさが暖かくて、どうしようもなく苦しかった胸の痛みがだんだんと和らいでくる。 それでも涙は止まらなくって、目の前の師範の厚い胸板に飛び込むと、師範は優しく私を受け止めてくれた。 「どうしたァ?どこか痛むのかァ?」 「ちがいます・・・しはん、やさしい・・・」 「何があったァ?優しい師範が聞いてやらァ」 師範の匂いに包まれて、だんだんと落ち着きを取り戻してきた私は、先ほどの出来事をポツリポツリと話し始める。 宇髄さんと任務が一緒だったこと、変な血鬼術にかかり接吻しないと出られない部屋に閉じ込められたこと、そして口づけされたこと。 話しているうちに、だんだんと私を抱きしめている腕の力が強くなってくることに疑問を感じ見上げると、青筋を立てて鬼の形相で怒っている師範の顔が視界に入り、一気に青ざめる。 まずい。 これは間違いなく怒っている。 へなちょこ鬼の血鬼術にかかってしまったからだろうか、それとも宇髄さんに口づけされたくらいでこんなにびーびー泣き喚いていることに怒っているのだろうか。 腕の力はますます強くなり、このままでは絞め殺されてしまうのではないかと恐怖を感じたので、おそるおそる師範に声をかける。 「し、し、しはん!!!もう大丈夫です!!!すみません!!!もう泣きません!!泣きませんので、あの、腕!!腕!痛いです!!!」 「あァ・・・悪い・・・」 師範は慌てて腕の力を緩めてくれたが、抱きしめることはやめてはくれなかった。 そして先ほどまでビキビキと音が聞こえてきそうなくらい凶悪な顔をしていたのに、何故だか今度は見たこともないような優しい顔で私を見ている。 そしてそのまま私の頬をゆるゆると優しく撫でるともう片方の腕でぐっと抱き寄せられた。 あれ、何だこれ。 こんな師範の顔見たことない。 まるで大切なものを愛でるようなそんな眼差しに思わず心臓がどくんどくんと高鳴る。 だんだんと近づいてくる師範の顔に思わず目を閉じると、唇に柔らかい感触。 師範に口づけされていると理解すると同時に一度離れた唇がもう一度重なり合い、今度はべろりと師範の舌が私の唇をなぞる。 驚いて離れようとする私の頭は師範の大きな手でしっかりと押さえつけられていて逃げる事は叶わない。 何度も唇を吸われ、隙間をぬって押し込まれた熱い舌は口内で絡み合い、くちゅくちゅと厭らしい水音を響かせる。 何度も何度も繰り返される口づけに上手く息ができなくて、酸欠になった頭ではうまく物事を考えられない。 私は何度も降り注ぐ唇をただ受け入れるのでいっぱいいっぱいだった。 そして長い口づけがようやく終わり、師範の唇が離れていくのと同時にぎゅうっと強く抱きしめられる。 「俺に惚れろ。 俺が全部忘れさせてやらァ。 もう俺のことしか考えられねぇようにしてやるよ。 いいなァ?」 「・・・ひゃい」 耳元でそう囁かれるともう完全降伏だ。 ほんのついさっきまで宇髄さんの唇の感触が忘れられなくって困っていたというのに、もうすっかり思い出せない。 師範のあの身体が溶けて無くなってしまいそうな熱い熱い口づけのことで頭がいっぱいだ。 初めての恋を覚えたあの夜よりも激しく高鳴る心臓の音は、きっと師範にも聞こえているに違いない。 師範は、真っ赤になって呆然としている私の髪を撫でると抱きしめていた腕を解き、私の耳元に唇を寄せる。 「今日はもう風呂入って寝ろォ。 そのあと存分に可愛がってやるよ」 師範はにやりと笑うと、真っ赤な私を残して、自室へと消えていってしまった。 残された私はあまりの衝撃で一歩も動けないでいる。 さっきのあれは、本当に師範なんだろうか。 つい数年前までかわいいとお世辞を言うだけで耳まで真っ赤になっていた師範と本当に同一人物なのだろうか。 あまりの師範の助平な口付けに、私の頭の中は師範でいっぱいになってしまった。 どうやら私の実らない初恋は綺麗さっぱり忘れることができそうです。 初恋にさようならと同時に生涯の伴侶を見つけた継子 この後もちろんドキドキしすぎて、眠りにつくことなんて出来ずに、堪らず師範の部屋に突撃する。 そしてもちろんいろんな意味でどろどろに可愛がられる。 継子は絶対誰にも渡さないマン実弥 初めて一緒に任務に行ったときから気になっている。 継子にしてほしいと言われたときは、自分の近くにいると死んでしまいそうなので断っていたが、継子ちゃんの熱意に折れる。 こうなれば絶対死なないように鍛え上げると厳しい稽古をつけてる。 おかげて継子ちゃんは超強い!そして一緒にいるうちにすっかり恋に落ちる。 継子ちゃんに近づいてくる悪い虫は排除!もちろん宇髄さんは一発殴られる。 初恋キラー宇髄天元 継子ちゃんの初恋がまさか自分だと思わず、仕方ないとはいえキスまでしちゃったので、継子ちゃん最強セコムの実弥には殴られるとわかっていながら、きちんと謝りに行くいい人。 継子ちゃんのことはかわいいしいい子だと割と気に入っているが、余命のなので実弥と幸せになってほしいと願っている。

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【鬼滅の刃】宇髄天元には3人も嫁がいた!?人生もド派手に行こうぜ!宇髄が鬼殺隊に入隊したきっかけは?忍以外の能力は?

宇 髄 天元 夢 小説

お館様から呼び出しを受けた私は、産屋敷家を訪れていた。 同じく柱である天元も呼ばれていたらしく、お館様の後ろに控えている。 どうやら呼ばれたのは二人だけのようで、私達が揃ったのを確認したお館様は、鴉を腕に乗せたまま話し始める。 「子供達が数名、帰って来ないんだ。 十二鬼月かもしれない。 時雨、天元、行ってくれるね」 「承知致しました」 「畏まりました」 数字持ちの鬼の相手は、例え階級が甲であろうと苦戦を強いられる時がある。 これ以上被害が出る前に、柱である私達が頸を狩らねばなりませんね。 「時雨」 「はい」 出て行く前に声を掛けられて振り返れば、微笑みを浮かべている御館様が私を見詰めていた。 「頼んだよ」 「ええ、お任せください」 お館様からの頼みとあらば……いえ、頼みではなくても、守ってみせますよ。 私の返事に安心したのか、お館様は「行っておいで」と、送り出してくれた。 一礼して産屋敷家を出る。 天元は門で待ってくれていた。 鬼が発見された場所は、此処から約一里先の村。 私と天元ならそんなに苦でもない距離ですね。 「十二鬼月……もしも上弦なら、早々に斬らないといけませんね」 「どんな奴でもド派手に斬ってやる」 「程々に、ですよ。 怪我をしたらあの子達が悲しんでしまいます」 「ホンットに時雨さんは須磨達が好きだな」 「可愛いですからね。 皆、守るべき子達ですよ」 須磨、まきを、雛鶴。 天元の妻である彼女達はくノ一だけど、私からしたら守るべき子達です。 こう言っては何ですけど、鬼相手でも人間相手でも、私の方が強いので。 それに、旦那である天元を慕う彼女達を見ていると、私まで幸せになれますからね。 「ふふ。 勿論、天元もですよ?」 「はぁ!? 俺はもう守られる程弱くねぇっての!」 今はもう柱として肩を並べている天元だけど、それでもやっぱり守りたい存在である事に変わりはない。 私にとっては、いつまでも可愛い後輩なのだから。 「ふふふ」 「くっそ……」 私からしたらまだまだ子供。 そうやって拗ねている所もまた可愛い。 これから十二鬼月と対峙するかもしれないのに、何とも穏やかな気持ちで道を歩いていた、その時。 「……天元」 「ああ……」 私と天元の柱としての感が、鬼の姿を捉えていた。 少し遠くに見える、あの森の中に居るらしい。 顔を見合わせて、頷き合う。 日輪刀を抜き、足に意識を集中させた。 次の瞬間には景色が流れるように過ぎて行く。 森の奥のそのまた奥。 誰も近寄らないような場所に着いた。 まだ姿は見せていないが、この感覚は間違いなく鬼だ。 それも夥しい数の人を喰っている鬼。 さてさて、どんな異形が待っているのかと思っていれば、現れたのは細身の女鬼だった。 美しかったであろう顔は血管が浮き上がっている。 充血した目に浮かぶのは、下弦の弐の文字。 お館様の予想通り、十二鬼月だ。 「鬼狩りか。 私の頸を斬りに来たんだな!」 「おう! もうド派手に殺してやるぜ!」 「ほほほ。 出来るものならやってみるが良い!」 襲い掛かって来る下弦の弐の頸を斬ろうと動いた時、辺りに霧が立ち込めた。 その所為で鬼の姿が掻き消える。 不自然なそれは十中八九、血気術だろう。 「成程。 これじゃあ、隊員達が手を焼くわけですね」 「チッ……地味に腹立つ」 見えぬ相手 おに との戦いはやりずらい。 そういう敵と戦った事のある私達ならまだしも、まだ歳若い彼等には難しいかもしれない。 まだ、生きているだろうか。 視線は鬼から外さず、気配を辿ってみれば……。 「天元。 この近くにまだ生きている気配がする」 「なら俺は派手に動くぜ」 「駄目です。 この霧の中じゃ近くに居た方がやりやすい。 私が合図するまで私から離れないでください」 そう言えば天元は、渋々という風に頷いた。 うん、素直でよろしい。 「鬼に悟られないように」 「時雨さんもな」 「ふふ……」 生意気な事を言ってくれる。 まあ、構わないんですけどね。 それにしても雲柱である私と、霧を血気術とする鬼が対峙するとは。 「面白いじゃないか」 「キャハハハッ!」 私が呟くと同時に、甲高い笑い声が木霊した。 「私の姿が見えないだろう! どうやって頸を斬る気だ鬼狩り共!」 「はぁ……哀れな鬼」 例え鬼が見えなくとも私には……否、私達には関係ない。 それに眼を使わなくとも、私の刃が届く範囲、前後左右上下全てを守れば良いのだから。 視覚がソレを捉えた瞬間に刀を振れば問題ない。 それに天元も居る。 大丈夫、下弦の弐になんかに負けませんよ。 「貴様らに私の頸は斬れぬよ! その前に死ぬのだからなぁ!」 鬼の戯言に耳を貸す必要はない。 神経を研ぎ澄ませて、いつでも技を出せるようにする。 一瞬の好機を逃がさないように眼を凝らす。 霧から爪や歯やらが飛んでくるのを薙ぎ払うのは簡単だ。 しかし変に避けたりして、天元に飛んでいくのはいただけない。 その奥にいるであろう隊士達の元にいくのも避けなければ。 時折、上手く払いきれなかったものが、私の身体を掠めていく。 「時雨さん!」 「私は大丈夫だから!」 動こうとする天元を諌め、攻撃を薙ぎ払っていく。 暫くそれを繰り返していれば、妙な違和感が私を襲った。 「……」 この霧、妙な感じがする。 姿を隠す為だけじゃないな、これは。 あの鬼の余裕そうな面持ちと、自分は絶対に頸を斬られないという自信。 「……時雨さん。 どうやらこの霧、毒を含んでるみたいだな」 「そのようですね」 天元に言われて気付く。 この霧は微量だけど、毒を含んでいる。 腕がぴりぴりと痛むのは切り傷の所為だけではなく、毒の所為もあったらしい。 「俺には微塵も効かねぇが、時雨さんは危ねぇんじゃねぇの?」 「少しなら耐性がありますよ。 天元程ではありませんけどね」 そう……ほんの少しだけ。 「へぇ……だからって長居は良くないぜ。 身体に響く」 隊士達の、ですね。 分かってますよ。 「このぴりぴりする感じは好きではないので、終わらせたいですね」 話している間も止まる事なく向かってくる爪を弾き返していく。 そんな一方的な攻防戦も、ゆらりと霧が揺らめいた事で終わった。 魚の鱗のように、何度も突きを喰らわせる技。 参考にしたのは、うろこ雲やいわし雲と呼ばれている雲だ。 安直だけど仕方ない。 残念だけど、私に名付けの才能はありませんでした。 弐の型で纏っていた霧を散らせば、女鬼の姿が現れる。 今まで破られた事がなかったのか、毒で死に至っていたのか。 何にせよ私に破られたのがそんなに驚きなのかと問いたくなる程、その顔は驚愕に歪んでいた。 否、それだけじゃない。 「……ヒッ!」 怯え、恐れ、哀しみ、悔しさ。 色んな感情が入り乱れていた。 「雲の呼吸 参ノ片 波乱雲 はらんうん 」 波を描くように刀を振って、鬼の逃げ場を封じる。 雲の呼吸は水の呼吸の応用でもあるから、こういった事も出来る。 しかし水ではないから、あくまで波の『ような』止まりだ。 「天元!」 「おう!」 名前を呼べば分かっているとでも言うように笑った天元は、一瞬でその場から離脱した。 「時雨さん! ド派手にかませ!」 彼等の側に降り立ったらしい天元の声が聞こえる。 ド派手にって言われてもねぇ。 私の呼吸は派手じゃないんですよ。 「雲の呼吸 壱の片 巻閃雲 けんせんうん 」 「ッひ、あ……」 一直線に鬼の頸目掛けて刃を振るい、固まる鬼の頸を撥ねた。 壱の片はただ単純に、真っ直ぐに鬼の頸を撥ねる技。 その様が、まるでハケでペンキをはいたように見える事から、この名を付けた。 ……何度も言いますが、私に名付けの才能はないのです。 刀を鞘に納めながら、地に落ちていく頸を見詰める。 視線が合った瞬間、僅かに鬼の血走った目が見開いた。 「……お、かあ、さ……」 地に転がった頸は涙を流しながら、か細い声でそう言った。 私が母親に見えているのだろうか。 あの瞬間、人であった頃の記憶が蘇っていたのだろうか。 そう思った時、自然と足が動いた。 「ごめ、ん……な、さ……」 「……ゆっくりお休み」 「……う、ん……」 近くに片膝をつき、消え掛けている頭を撫でて微笑む。 女鬼は子供のように目を細めて、消えて逝った。 「願わくば、彼女が人として生まれ変われますように」 そして、幸せになれますように。 「時雨さん!」 名を呼ばれて振り返れば、天元の他に生き残った数名の隊士の姿が。 皆一様に怪我は酷いけれど、生きている。 ちゃんと、心の臓が動いている。 「良かった……」 お館様。 きちんと、守りましたよ。 「……さあ、帰りましょうか」 笑い掛ければ、頬がちくりと痛んだ。 触れてみればぬるりとした感触。 見れば血が付いている。 あれ、と首を傾げれば、至る所が痛み始めた。 どうやら天元に傷が付かないように戦っていたから、自分に細かな傷が結構ついてしまっていたようだ。 でもまあ、軽傷なので大丈夫ですね。 呼吸で止血しているし。 毒の影響も受けていないようなので。 「その怪我……!」 「ん? ああ、大丈夫ですよ。 明日になれば治っていますから」 「治療しろよ! 毒の霧の中に居たんだからな!?」 「確かにそうですけど。 そんなに心配しなくても大丈夫です。 それより天元、怪我はないですか?」 「っねぇよ!」 「そっか、良かった」 私を見て固まる天元にもう一度笑い掛けて足を踏み出したら、勢い良く腕を引っ張られた。 それによって腕の切り傷が痛む。 呼吸で止血しているとはいえ、痛むものは痛むんですよ。 「ちょっと、天元? 痛いんですけど?」 「ちゃんと治療しろ!」 それはもう凄い剣幕で天元に迫られる。 大丈夫だと首を振っていれば、そんなに軽いわけでも小さいわけでもないのに、軽々と片腕で抱えられてしまったので逃げられない。 体格に恵まれた天元に勝てるわけなかった。 「天元、私よりこの子達の方が重傷ですから」 「近くに隠達が来てる。 後は任せとけば問題ねぇよ」 「いえ、そういう問題ではなくてですね」 「音柱様! 雲柱様!」 説得しようとした私の声は、駆け付けてくれた隠さん達に遮られてしまった。 「後は任せたぜ」 「はい!」 天元に任せたと言われた隠さんは勢い良く頷く。 いや、私の意見は無視ですか。 無視なのですか? 「派手に行くぜ、捕まってろよ!」 「ちょ、天元!?」 私を抱え直して駆け出した天元に思わず抱き着いてしまった。 だって速いんだもの。 有り得ないくらい速いんだもの! 叫ばなかった私を褒めて欲しいくらいです! [newpage] 私が周りの景色がころころと変わっていく様子に唖然としている間に、蝶屋敷に着いてしまった。 あっという間だった。 本当に。 「胡蝶!」 「夜中だから静かに!」 「時雨さんは黙ってろ!」 大声で叫ぶ天元を窘めたら、逆に何故か叱られてしまった。 解せない。 「宇髄さん何なんですか……っ時雨さん!?」 「やあ、しのぶ」 五月蝿かったのか怒りながら出て来たしのぶ。 天元の腕の上から笑い掛ければ、凄い剣幕に変わった。 それに苦笑しながら説明していく。 「相手の攻撃を全部弾き返せなくて掠ってしまっただけなので、大した怪我ではありません」 「霧は毒含んでたし、飛ばしてきてた爪とかにも毒含んでたら危ねぇだろが」 「いや毒は微量だったし、少しだけど耐性があるので大丈夫です」 「下弦の弐の毒だ。 何かあるかもしれねぇだろ!」 「早く中へ入ってください!」 二人から凄い勢いで迫られて、ベッドに運ばれてしまった。 軽傷なのに、解せない。 「どうして宇髄さんは無傷なのに時雨さんはこんなに怪我をしているんですかね?」 「それは」 「また時雨さんが庇ったんですね全く無茶しないでください」 「しのぶ」 「宇髄さんは柱なんですよ? 時雨さんが庇わなくとも暑苦しいくらいの筋肉があるんだから大丈夫です」 部屋に行く途中の廊下で話して、否、表情やら何やらで分かってはいたけど……しのぶは怒っているようだ。 私の声を遮って息継ぎなしで言い切る時のしのぶは、物凄く怒っているのだ。 無表情ではなく笑顔なのがまた怖い。 本当に怖いと思っているのかって? 少しは思ってるよ。 可愛いって感情が勝つけどね。 「此処です。 傷に響かないよう、静かに降ろしてくださいね。 乱暴に降ろしたりなんかしたら……ふふふ」 「わ、分かった」 笑顔なのに怖い。 あ、天元の顔が引き攣ってる。 乱暴に降ろしたらどうなるのか想像したのかな。 考えない方が良いのに。 何かこう、大変な事になる気がしますから。 あ、でもごめんなさい、天元。 今から私が言う事は、しのぶをもっと怒らせると思います。 派手に大変な事になっても、許してくださいね。 なんて、心で言っても聞こえないけど。 「ねえ、しのぶ」 「何ですか?」 「大した怪我ではないし、明日には復帰して良いですよね?」 ベッドに寝かされながら言ったら、しのぶの眉がぴくりと動いて「駄目です。 三日は大人しくしていてください」と、厳しく言われてしまった。 私は「軽傷だから大丈夫ですよ。 任務に支障はないし」と、力こぶを作って見せたり、腕も足も動かしてみたり、無事だという事をアピールをしてみたけど。 「駄目です。 時雨さんはすぐに無茶をしますから、今回は言う事を聞いていただきます! 安静にしてください!」 笑顔も消えたしのぶの剣幕に圧倒されて渋々、本当に渋々、私は大人しく療養に専念する事にした。 運ばれたのが夜中だった事もあり、しのぶに「もう寝てください」と、優しい声音で言われた私は任務中ずっと気を張っていた事もあり、すんなり眠りに落ちた。 [newpage] そして、次に目覚めた時。 「……?」 霞む視界に映ったのは天元だった。 腕を組み、大きな身体を丸めて目を瞑っている。 まさか、ずっと此処に居てくれたのだろうか。 「天元?」 私が声を出したからか気配を感じたからか、天元の両目が開かれ、派手な化粧を施している目が私を見た。 「何で此処に……っと」 起き上がろうと力を入れるけど、寝起きだからかなのか、それとも薬の影響なのか、上手く力が入らなかった。 「ほら」 「……あ、ありがとう」 私の背を天元の大きな手が支えてくれたお蔭で何とか座る事が出来た。 さらりとこういう事が出来る天元はやはり男前だ。 「見舞いに来てくれたんですか? それともずっと此処に?」 「胡蝶の診察受けてから一回家に戻って、アイツらに時雨さんが怪我したって報告した後、また来た」 「何故あの子達に言ったんですか。 余計な心配を掛けてしまうでしょう?」 思わず三人に詰め寄られるのを想像してしまった。 あの子達は心配症だから、知られたくなかったのに。 「良いんだよ、アイツら心配してたから。 報告しなかったら今頃大変な事になってんだからな」 「それは困りますねぇ」 私がそう言えば「だろ?」と、天元が笑った。 「それにしても、元気そうだな」 「まあ、大した怪我じゃありませんでしたからねぇ」 腕や首元を覆う包帯はやり過ぎなくらいだ。 軽傷だもの。 笑みが零れるけど、頬の怪我の所為か上手く笑えなかった。 「上手く笑えないですね。 ふふ、変な顔になっていなかったら良いんですが」 「……」 頬に手を当てて薄く笑ってみる。 これくらいなら突っ張らず、笑えるみたいだ。 「大袈裟ですよねぇ、しのぶも。 これくらい何て事ないのに」 「……」 「鬼と戦ったんだから、そりゃあ怪我もしますしねぇ」 「……」 「……どうしたんです、天元。 さっきから」 少し幼さを感じさせる笑みを消して、私から一切視線を逸らさず、一言も話さない天元に居心地の悪さを覚えた。 整った顔立ちだから無言で見つめられると少々怖い。 『眼』で気持ちを察しようとしても、本当に無表情なものだから無理だった。 流石は元忍。 いや褒めている場合ではなかった。 本当に居心地が悪いからやめてほしい。 此処は私の部屋なのに。 「……時雨さん、俺の所に来い」 「え?」 「俺の所に来い」 やっと口を開いたかと思えば『俺の所に来い』と。 一体全体、どういう意味だろうか。 寝起きの頭では天元の言葉の意味が理解出来なかった。 何とか意味を察しようと頭を動かす。 うーん……あ、もしかして。 一つだけ頭に浮かんだ。 「しのぶから復帰許可が出たら、天元の屋敷に遊びに行きますよ。 心配させてしまったお嫁さん達に会いたいですし」 「違ェよ何でそうなんだよ」 「おや、遊びに来いっていう意味じゃなかったんですか?」 「全然違う」 険しい顔で否定されてしまった。 遊びに来いという事じゃなかったのか、と思いながら天元を見つめる。 「……」 先程とは違い、少し感情が出ている彼の表情から読み取れてしまった答えに、心底困ってしまった。 それは駄目だと、首を横に振る。 「諦めなさい」 「無理だな。 絶対諦めねェ」 「何度も断っているでしょう? 私は嫁にはなりませんよ」 目の前の後輩は昔から事ある毎に『嫁になれ』と言っている。 あんなにも美人な妻が三人も居るのだから、わざわざ自分なんか嫁にしなくても良いだろうに。 しかもこんな行き遅れ。 「俺はもうアンタが怪我すんの見たくねぇんだよ」 「鬼を相手にしてるんだから怪我もします。 私は気にしていないし、これからもそう。 でなければ、柱なんて務まらないでしょう」 「俺が嫌なんだよ」 眉間に皺を寄せてこちらを睨む天元。 それでもなお顔の良さは損なわれていないのだから、世界は残酷だ。 いつもの『派手』という口癖が全然出てこないところを見るに、本気なのだろう。 だからこそ困るのだ。 「俺が柱になる前から、アンタは柱として鬼を斬ってた。 何度助けられたか分かんねェくらい、アンタは守ってくれてた。 今回もだ」 「力を持つ者が守るのは当たり前でしょう?」 「今は俺もアンタの言う『力を持つ者』だ。 俺だってアンタを守れる」 「そうですね。 柱になりましたからね。 でもね、天元。 それと嫁になるのとでは、話が違いますよ」 庇われたのが嫌だったのだろうか。 今回は下弦の弐と言えど十二鬼月だったから、一応の事を考えて下がらせていたのだけど。 「庇ったのは後悔していないし、これからもきっと後悔しません。 だから、謝りませんよ?」 「そこは気にしてない。 そりゃあ男としちゃ庇われるなんざ情けないが、今回は霧の血気術を使う鬼だったから、大人しく下がってた」 「うん」 「音の呼吸は爆発を伴う技だ。 得体の知れない霧の中で使うわけにはいかなかったしな。 時雨さんもそれを考えて、俺を下がらせたんだろ?」 「はい。 もしもあの霧に……例えば、発火やすい、なんて性質があったら、天元の呼吸との相性は悪いですから。 場所も森でしたしね。 無駄に周りを燃やしかねなかった」 何も言わなかったのにそこまで汲んでくれていたとは。 やはり天元は、周りの状況把握と理解能力が高い。 元とはいえ、忍の次期頭領としての能力は衰えていない。 「だから今回は仕方ないって分かってんだ。 分かってんだよ」 「なら」 「でも!」 私の話を遮るように大声を出した。 俯く様子は、まるで少年のようで。 無意識に伸びていた手を、大きな手が包み込んだ。 「でも、俺が居ながら、アンタに怪我をさせたって事実が嫌なんだ」 傷付いた子供のように眉を寄せる目の前の子は、何かに怯えているようにも見える。 「天元。 君には優先順位があるでしょう?」 一に須磨達、二にその他の人間、三に天元自身。 前にそう言っているのを聞いた事がある。 「私は、天元自身より下で良いんですよ」 ぎゅっと手を握れば、複雑な表情を浮かべた。 「私まで抱え込まなくて良い。 君は須磨達を、人々を、守っていれば良いんです」 「ッじゃあ、誰がアンタを守るんだよ!」 「ふふ。 私は守られる程、弱くありませんから」 弱かったらこの歳まで死なずに、柱として居続けられないと自負しているから。 自惚れじゃない事は屠った鬼の数と、年数が証明している。 「天元、心配してくれてありがとうございます。 気持ちはとても嬉しいですよ」 握った手に力を込めれば、天元は何か言いた気に口を開閉させたけど、黙って俯いた。 「……絶対諦めねぇからな」 「ええ…………」 ボソリと呟かれた言葉に引き攣った声が出たのは許して欲しい。 諦めてくれないと困るんですけどねぇ。 「絶対嫁にする」 「だからなりません」 私と天元の言い合いがまた振り出しに戻った。 全くこの子は……思わず苦笑してしまう。 「全く……頭が硬過ぎるぜ?」 「君は諦めが悪過ぎますよ?」 「時雨さんもな? もう諦めて嫁になれよ。 派手に幸せにしてやるから」 天元は「そんくらいの甲斐性はあるつもりだ」と、笑いながら胸を張って言った。 それに対して私が「私を幸せにする暇があるなら、三人のお嫁さん達をもっと幸せにしてあげなさい」と言えば、その端正な顔をふいっと背ける。 ……拗ねましたね、こりゃ。 こういう所が可愛いんですよね。 「はいはい、拗ねないで。 機嫌直してくださいな?」 「……時雨さんが頷いたらな」 「それは無理です」 「じゃあ俺も無理」 大きな身体ごと背ける姿は、小さな子供にしか見えない。 六尺は軽く超える背丈だから、全然小さくはないのですが、雰囲気がもう完全に拗ねている子供のそれだし、それに天元だから可愛らしく思えるのでしょうね。 「天元」 「……」 「天元くーん」 「……」 返事をしなくなった天元。 これは困りましたねぇ、どうしましょうか。 頭を撫でる事も忘れない。 「ありがとう、天元。 気持ちは嬉しいですよ。 本当に」 「……」 天元は何も話さない。 だけどその手は、私の背に添えられていた。 それからは私も話さない。 ただ、天元の頭を撫でるだけ。 どれくらいそうしていただろう。 天元が少し身動きした事で、その時間は終わりを告げた。 そっと離れて顔を見ようとした時。 扉の方から感じる視線にそちらを見れば。 「ふふふ。 楽しそうな事をしていますね」 「し、しのぶ……」 にこにこと、可愛らしい笑みを浮かべたしのぶが立っていた。 「私の記憶違いでなければ、安静にしてくださいと、言いましたよね?」 ゆっくりと歩いて来るしのぶに、思わず顔が引き攣った。 菩薩のような笑みなのに、後ろに修羅が居るような気がするのは、私の気の所為でしょうか。 気の所為であってほしいです、切実に。 ちなみに天元は後ろを向いていて見ていない筈なのに、何かを感じ取ったらしく、しのぶが私達に話し掛けた瞬間に立ち上がっていた。 流石は元忍。 危機察知能力が高いですね。 「時雨さん?」 「はい」 「お、と、な、し、く。 ですよ?」 「はい、分かりました」 一字一句区切って、しかも笑顔で言われてしまったから、大人しく布団に横になりました。 ええ、はい。 怖いですからね。 可愛いけれども。 まだ不貞腐れている天元は追い出された。 流石の天元もあのしのぶには勝てなかったみたいですね。 怖かったからなぁ……しのぶ。 去り際に「また来るからな!」っていう捨て台詞を吐いていったのは、勘弁して欲しいんですけどね。 確実に先程みたいな言い合いになるだろうし。 いや、お見舞いに来てくれるのは嬉しいし、また会いたいんですけど……また怒られてしまうのは嫌ですね。 思わず遠い目をしてしまう。 「ああ、そういえば」 聞こえた声にしのぶの方を見れば。 「貴女が助けた隊士達、皆無事ですよ。 此処で治療を受けています」 そう、穏やかに告げられた。 「……そう、ですか。 良かった」 軽く息を吐く。 安堵が心に広がった。 あの後、隠さん達が此処まで連れて来るまで間に、死ななくて良かった。 本当に、良かった。 若い芽が摘まれなくて。 花開く可能性を残せて、本当に。 救えなかった子達も居るけれど。 その数の方が多いけれど。 僅かでも、守る事が出来て。 「少し、眠いような…。 」 安心したからだろうか。 起きたばかりなのに瞼が落ちてくる。 今は、この眠気に抗わずに眠る事にしよう。 「おやすみなさい、しのぶ」 「おやすみなさい、時雨さん」 優しいしのぶの声を最後に、私はまた眠りの世界に誘われたのだった。 [newpage] 見舞いに来てくれたお嫁さん達と天元が組んで言われる「嫁いで来て」の言葉を、私が頭を抑えながら否定する日々が来るのだけど、それはまた別のお話。 皆からは時雨さんと呼ばれている、柱歴が長い 悲鳴嶼さんより長い 女性。 自分より歳下で可愛い人達だから、守らねば!となっている。 だから他の人を庇って怪我をすること多々あり。 そしてめちゃくちゃ怒られる。 みんなこわい。 でもやめない。 だってみんな守るべき子だもん。 え?私?守らなくていいよ、そこそこ強いから。 水の呼吸と雷の呼吸から派生した雲の呼吸を使う。 ネーミングセンスが皆無なんですって本人思ってる。 心配しなくても良いんですよ。 私は強いんですから。 ずっと時雨さんにプロポーズして断られている人。 だけどめげないしょげない派手に押すぜ!精神で諦めてない。 翌日から三人の嫁と一緒に嫁に来い攻撃をし始める。 時雨さんが嫁に弱いのは知ってるからな。 お嫁さん達も凄いノリノリで口説きに来る。 大歓迎ですよ!だけど頑なに頷かない雲柱さんと旦那様を交互に見てあたふたして、雲柱さんに可愛いなって思われていたり。 絶対、俺が幸せにしてやる。 無茶をする雲柱さんに呆れながらも、それで沢山の隊士達が救われているのも事実な為、強く言えない 多分。 安静にと言ったのに身を乗り出して音柱さんを抱き締めていた雲柱さんにおこ。 そりゃあもう、おこ。 音柱さんにもおこ。 何で抱き締められてるんですか貴方。 羨ましい。 アオイちゃんが見に行こうとしたのを止めて、自ら様子を見に行くくらい心配していたのに。 でも何やかんや雲柱さん元気だし、良いとしましょう。 でも次、大怪我でもしたら……ふふふ。 大正ひそひそ噺 雲柱さんに退治された鬼は毒霧と毒の牙を使って人を殺していたみたい。 今まで破る人がいなかったからとてもびっくりして、怯えていたみたいだよ。 雲柱さんは水の呼吸と雷の呼吸を少しだけ使えるよ。 でもほんの少しだけ。 合わない呼吸だから上手く頸を斬れないらしいよ。

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#鬼滅の夢 #宇髄天元 雲の如く

宇 髄 天元 夢 小説

赤き血潮が満ちる水面、その中心に浮かぶ黒色の硝子玉。 下弦の弐、 魘夢 えんむ は脆く今にも崩れそうな球体の縁をなぞる。 「鬼を素手で殺せる君の肉体はさぞかし強力なんだろうね。 けど、人間の原動力は心、精神だ」 魘夢は浮かぶ精神の核を手に取る。 「精神の核を破壊すればいい、そうすれば生きる屍だ。 殺すのも簡単」 その手に魘夢はゆっくりと力を加えていく。 その顔は紅潮し喜色を浮かべていた。 彼が考えているのは、忍の鬼狩り 宇髄 天獄 うずい てんごく を殺した後の事。 自身の主である 鬼舞辻 無惨 きぶつじ むざん が執着している鬼狩りを殺せば、自分はより評価される。 「特に君の心は脆くて弱い。 ほら、こうして壊すだけで終わりだ」 天獄の精神の核に罅が入る。 「……ッ!!?」 その瞬間、強烈な悪寒が魘夢を襲った。 鬼である魘夢が窒息で死に至る事は無い。 しかし、今の魘夢には確信にも似た死の予感があり、咄嗟に天獄の夢から抜け出した。 累 るい の糸により縛り上げられていた天獄であったが、その右腕だけは糸束を突き抜けていた。 「俺が何度、あの夢を見たと思う?その度に何度、自死を試みたと思う?」 忍を辞め、自身の罪を理解した天獄は、これまで何度もあの光景を幻視していた。 その度に、後悔の念は募っていく。 罪深い己を殺す。 その程度の事に躊躇いなど無かった。 何度も何度も自身を殺し続ける事により、意識は自然と現実へ近づいていったのである。 天獄の表情を見て、魘夢は恐怖した。 俺の苦しみを望んだ事だ、俺に幸せな夢だけを見せていれば勝算はあっただろうに」 嗤っていた。 それなのに、その目はどこまでも冷たい。 それは救いを諦めた姿であり、自身への罰を求める姿。 鬼を通じて自身を見つめているであろう鬼舞辻に向けたもの。 そして黒き籠手を纏った掌は、魘夢の首を指の握力だけでへし折り、その骨をも砕く。 こうして余りにも呆気なく下弦の弐 魘夢は絶命したのであった。 天獄は灰になり散っていく魘夢の姿を見ていた。 恐怖ゆえの涙を流しながら死に絶えた魘夢の姿。 人を害し殺してきたくせに自身の死に怯える姿は滑稽なものに映る。 そしてそれは天獄自身にも当てはまる。 魘夢が流す血溜まりに映る自身の姿を見て再び嗤った。 「これでは……貴様らと何も変わらないな」 己もまた人を害してきた悪鬼でしかない。 ならば己の命にもまた価値など存在しない。 自身のくだらぬ命なら容易に賭すことができる。 自身の命を懸けて悪鬼を殺し、人を守る。 それだけが、己が生きている間にできる唯一の贖罪。 「鬼舞辻 無惨。 貴様は、この俺が殺す」 その為に 隠 かくし では限界がある。 釜鵺にとってカナヲの善戦は予想外のものであり、その言葉は心からの称賛であった。 「夜明けが近い。 もういい加減、終わらせてやる」 「……ッ!?」 いい加減、自身の目的を果たさねばならない。 そう思った釜鵺は、これまで以上の光を纏った。 まだ、上があるという事実に驚愕するカナヲ。 大きな代償が存在するが、釜鵺に対抗するには、今のカナヲにはそれしか無かった。 釜鵺もその妖艶な声に反応し、すぐさま反転する。 「戯れ」 しかし、蝶のような軽やかな動きから放たれる幾重の突きを躱す事はできなかった。 すれ違う二人、現れた色鮮やかな羽織を纏った女の剣士は、カナヲの目の前に着地する。 「よく頑張りましたね、カナヲ」 「……師範」 カナヲの師であり義姉。 そして、鬼殺隊最高位の剣士の一人。 蟲柱 胡蝶 こちょう しのぶ。 彼女は 産屋敷 耀哉 うぶやしき かがや の命で、那田蜘蛛山を訪れたのであった。 しのぶはカナヲの頭を軽く撫でてから、背後の釜鵺を見据える。 そして、すぐさま悟る。 「毒、毒かァ、貴様ァッ!?」 身体の焼けるような痛みに耐える為、釜鵺は歯を食い縛る。 「貴方達が苦手な藤の花を抽出した毒です。 私は鬼の頸を断つ事ができません。 けど、鬼を殺せる毒を作る事はできる」 「くそがァァァ!!!」 十二鬼月である釜鵺には一度の毒では致死には至らなかった。 身体を僅かに再生させながら釜鵺は突貫する。 しかし、その動きに先程までカナヲに見せていたキレは無い。 「蜂牙の舞い 真靡 まなび き」 しのぶは地面を強く踏み込み、その力を余す事なく突きに乗せる。 放つの一撃にて決める型。 その突きは先程よりも速く鋭い。 上方へ放ったそれは、釜鵺の喉元から頭蓋にかけてを射抜いてみせた。 「グァッ……!!」 頭を穿たれて、動きを止める釜鵺。 その剣尖からは再び、液体が体内に流れ込む。 「当然ですが、先程よりも強いものですよ」 「アァァァアアア!!!」 釜鵺の傷口から血が溢れ出、叫び声を上げながら崩れ伏す。 その激痛は先ほどの比では無い。 しのぶの鞘には複数の毒液が仕込まれており、鞘の中で調合する事によって複数の毒を使い分ける事ができるのだ。 自身から吹き出した血溜まりに沈み、事切れた釜鵺。 「さようなら、鬼の方」 一切、微笑みを崩す事なくしのぶは、下弦の陸に勝利するのであった。 下弦の伍 累 るい に近づけない苛立ちをぶつける。 「禰豆子を、返せッ!!」 自身の妹、 竈門 禰豆子 かまど ねずこ を累により捕らえられた 竈門 炭治郎 かまど たんじろう は鋼鉄の糸を掻い潜りながら必死に進む。 しかし、先程の下弦の参との戦闘において自身の得物が折れてしまったため思うように力を発揮できずにいた。 そんな二人であったが、まだ余力のある 我妻 善逸 あがつま ぜんいつ が累へ向かい強襲する。 「雷の呼吸 壱の型」 低い前傾の姿勢から居合を構える。 その目は閉ざされていた。 先程、十二鬼月が新たにもう一体現れるという衝撃により善逸は意識を失った。 しかし彼は、気を失って初めて自身の力を十二分に発揮出来る剣士である。 「霹靂一閃!」 「ッ!!」 圧倒的な加速で累との距離を詰める。 病葉 わくらば との戦いよりも一段と速い速度に累は目を剥く。 しかし、直線的な動きである為、対処は不可能では無いと判断する。 冷静に累は新たな糸を放った。 そして空中で更なる加速をした。 累は面前に迫る善逸への警戒を改め、自身の血鬼術を解放する。 「血鬼術 刻糸牢 こくしろう 」 鮮血を纏った糸は、先程までの糸とは比べ物にならない程の強靭な硬度を持つ。 蜘蛛の巣状に張られた赤色の糸が、スピードに乗った善逸の前に現れる。 急速に距離を詰めた善逸には躱す手段が無い。 「善逸ッ!!」 炭治郎が叫ぶ。 しかし、距離のある炭治郎にも伊之助にもどうする事もできない。 善逸はその光景に自分の死を予感する。 累の糸に吊るされていた禰豆子が目覚め、覚醒した血鬼術を放った。 それは糸を伝う赤炎。 一気に燃え盛り、善逸の前に迫った糸を焼き切ってみせた。 「糸がッ……!?」 放たれる黄色の刃。 加速の乗った超速の居合。 それは累の頸を完全に捉えた。 しかし、頸を切り裂くには至らなかった。 善逸の刃は皮膚に食い込んだだけで止まってしまう。 先程、善逸を救った禰豆子は自身の力を使い果たし再び意識を失ってしまう。 その光景に累は自身の勝利を確信し嗤う。 「ウォラァッ!!」 伊之助は善逸の危機を察し、咄嗟に自身の二刀を投擲する。 自身の得物で善逸の刃を押し込もうとしたのである。 「そんな物が通用すると思う?」 伊之助の得物は届かない。 振るわれた血色の糸で伊之助の刃を斬り裂かれてしまう。 「はァァァ!!!」 善逸と伊之助が時間を稼いだ事により、炭治郎は累の後方に迫っていた。 叫びながら一閃を放つ。 「ヒノカミ神楽!!円舞ッ!!」 病葉との戦闘で限界を超えていた炭治郎。 その炎を纏った一刀には先程までの勢いは無かった。 「もう面倒だ。 君達はまとめて始末してやる」 血色の糸が渦のように編まれて回転する。 糸は広範囲に広がり、三人の元を覆う。 「 刻糸輪転 こくしりんてん 」 回避不可の一撃。 自身の命を覚悟する三人。 その時、炭治郎達の身の丈にも及ぶ二つの刃が周囲を舞った。 網目のように覆われていた糸を次々と断ち切っていく。 「なッ……!!?」 自身の必殺の一撃が無力化され驚愕する累。 その隙に、大柄な影により回収される三人。 驚く間も無く一瞬の出来事であった。 三人の見据える先に、一人の男が立つ。 「新人のわりにはよく持ち堪えた、この俺が派手に褒めてやるッ!」 下弦の肆、 零余子 むかご を打倒した音柱 宇髄 天元 うずい てんげん が三人の救援のために現れた。 その背から感じる強さに安堵する三人であったが。 「ま、待ってくださいッ!い、妹は、禰豆子は鬼だけど!人を襲いませんッ!!」 「妹ォ?何、言ってやがる?人を襲わない鬼なんて、信じられるか」 炭治郎は息も絶え絶えながら禰豆子もまとめて殺そうとする天元に縋り付くように止めに入る。 炭治郎の言葉を切り捨てる天元。 これまで、柱として多くの鬼の悪行を見てきた天元にはその言葉を信用する事はできないのであった。 「例えそれが本当だとしても、これから人を襲わねェという保証にはならん」 「禰豆子ちゃんはむしろ俺たちを守ろうとしたんだッ、絶対に人は襲わないッ!」 「俺も見たぜッ!!」 天元の言葉を否定する善逸と伊之助。 三人の真剣な目を見た天元は頭を掻き、ため息をつく。 「派手に面倒な奴らだな……分かった、取り敢えずあの下弦を殺す。 女の方はそのあと考える。 いいなッ!?俺が派手に活躍するんだ、黙って見てろよッ!!?」 三人の返事を聞く事もなく天元は累に向け疾走する。 その体躯に見合わぬ俊敏な動きに累は再度、驚愕した。 「 殺目籠 あやめかご ッ!!」 天元の周囲を囲う網目状の血色の鋼糸。 それを見て天元は笑みを深める。 「地味に囲えばどうにかなると思ったかッ!?甘ェよッ!!」 無闇矢鱈に振り回される二刀。 「音の呼吸 肆の型ァッ!」 振るわれる刃の隙間に、火薬玉が投じられる。 摩擦により火薬玉が発火する。 「 響斬無間 きょうざんむけん ッ!!」 それは天元を守るように広範囲に広がる爆炎。 瞬時に天元を殺さんとしていた糸を無力化してみせた。 爆煙を突き抜け天元は更に加速する。 「終わりだッ!下弦ッ!!」 その速度のまま振るわれる二刀は累の頸を捉え、斬り裂いた。 崩れ落ちる累の頸。 下弦の伍 累に天元は派手に勝利してみせた。 これにて、那田蜘蛛山に降り立った下弦のの血戦は終わりを告げた。 結果的に、怪我人は多くいるが鬼殺隊の完勝という形に終わるのであった。 しかし、鬼狩りの仕事は、まだ終わりでは無い。 下弦の伍との勝負が決したの見て、安堵の表情を浮かべる三人。 その姿に天元は一瞬目を向ける。 (悪く思うなよ、ガキ共) その瞳は、戦闘を終えた者の雰囲気では無い。 動き出す天元。 炭治郎達もそれに気がついたが、間に合わない。 天元は迫る、未だ意識の戻らない禰豆子の頸へ。 (鬼狩りが鬼を斬らない、そんな例外があり得ちゃいけないんだよ) 鬼殺隊がどのような組織かを考えれば、柱である自身が鬼を見逃すという選択肢は有り得ないものだ。 もしそれを許してしまえば、必ず軋轢が生まれる。 下弦の集結という異常事態を考慮しても、鬼殺隊に不和を生じさせる可能性を極力排除したいという天元の考えは当然のものであった。 禰豆子へ迫る二振りの刃。 炭治郎達は声にもならない叫びを上げる。 その時、気配なく一つの影が天元と禰豆子の間を過ぎる。 それはその一瞬で禰豆子を抱え地に着地した。 元忍である天元よりも速い動き。 その見覚えのある動きに天元は最高度まで警戒を高めた。 「天獄さん……!!」 突如、現れた宇髄 天獄は抱えた禰豆子を炭治郎に引き渡し、炭治郎の頭を軽く撫でた。 その姿に安堵した炭治郎は天獄の名前を読んだ。 「大丈夫だ、禰豆子は無事だ」 「天獄、だと……!?」 炭治郎の述べた名前に驚愕する天元。 天獄はそちらへ向き、改めて自身の肉親と対面する。 「久しいな、宇髄 天元」 血を分けた兄弟が、再会した。

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